
6時起床。6時からやっているホテルの最上階の風呂に向かう。熱めの湯で目を覚ます。先月も来たから2回目だ。部屋に戻って先日施主からいただいたドリップコーヒーを入れる。電気ポットの使い方も慣れた。部屋に2つ備えられているペットボトルの水がどこに置いてあるかも分かっている。テレビのリモコンにビニールが被せてあるのを外さずに使っていたが、2回目だからもうビニール取って捨てちゃう。やっぱり養生だったのかなと思ってまた被せる。チェックインの所作からホテル内での振る舞いまで小慣れた感じ満載のビジネスマンを尊敬の目で見ていたが、なんと2回目で手に入れられるものだった。ビビって損した。コーヒーは熱々だ。冷めるまで待つ。
現場に向かう。キャリーケースを引く。キャスターの性能が相当いいのだろう。ストレスがない。アスファルトの粗いところと綺麗なところが振動の違いですぐにわかる。到着。テナントの大屋さんに挨拶。いい方で安堵。
左官さんが到着する。現場で作業内容の確認。墨出し。準備工。材料搬入やトイレの位置、水や電気をどこから使うかの確認と現場の鍵の管理方法の共有に廃材の処分方法の確認。現場監督の仕事。眼鏡を破損。遠視用の眼鏡で、近視も入ってきた事が分かり、外す時間が増えたのでこれも運命と受け入れる。しばらく無しで生活してみる。元々装身具の類もつけるのは苦手。腕時計も、ネックレスもできない。眼鏡もできたらかけたくないので、これ幸い。怪我はしなかった。毎月の墓参りの効果か。あ、今月まだ行ってないや。ありがとうご先祖様。
段取りはできた、あとは職人さんに任せる。行きたかった工芸青花の展示に向かう。東西線に乗る。東京の夜間学校に通っていた時に毎日乗った東西線。どこかにあの日の自分が居ないかと探す。夕方電車に乗って、夜帰ってきて、そのまま駅前のすき家でバイトをして朝を迎える日々だった。近くにはおそらく韓国ゲイバーがあって、そこの店員がよく食べに来ていた。ある日、「お兄ちゃんは何曜日にシフトに入っているの?」とカタコトで話しかけられた。自意識過剰だった当時の私は回答次第では通われて、誘われて、色んなところを触られるんだ!と怖くなり咄嗟に「今日が最後のバイトなんです」と渾身の嘘をついた。世の中には必要な嘘があるとあの時身をもって知った。次の日以降は怖くて帽子とマスクをしてバイトをした。結局二度とあの二人と会う事はなかった。甘くも切なくもない思い出が東西線にはある。キョロキョロしたところであの日の自分は当然乗っていないし、降りたことのない神楽坂に着いた。
中村好文さんが古道具坂田さんから買ったもの約60点の展示。展示は見応えあり。でも一番知りたかった値段についてはわからないまま。中の雰囲気は暗くていい感じ。古道具の世界は面白い。
神楽坂から移動して日本橋へ。骨董古道具屋さんで物販分室の仕入れ。日本橋から東京駅へは歩いて行ける距離。小学生の女の子とすれ違う。低学年かな。ランドセルのベルトをしっかり持って、口をキュッと閉じて、力強く早歩き。なんとなく、心配になる。あの年で、こんな都会で、一人で。早く安心できる家に着くといい。余計なお世話か。
駅まで家族が迎えに来てくれた。というか頼んだ。一日半会っていないと話すことが沢山ある。眼鏡壊れたんだよ。キャリーケース、買ってよかったよ。晩御飯まだなんだよ。テストどうだったの。小学生の女の子がね、一人で都会を歩いていたんだよ。父さん沢山歩いたよ。腰が痛いのよ。整体の先生から予約の返事きてないわ。催促どうしよう。お土産忘れた。ただいま。おかえり。
ってのが先日の飼い主の独り言。ワン。

