
子供の頃から飼いたかったのだが、お世話ができないでしょう。という当然の理由で叶わなかった。ハムスターとインコは飼っていたが、あっという間に亡くなって、先祖の墓の道中に埋めた。墓参りに行く途中で、坂から転がり落ちた父を受け止めた木の根元が丁度埋めた場所だったので、きっと助けてくれたんだね。なんて笑った。父は痛そうだった。
それ以降ペットとは無縁の生活だったが、結婚し、妻の実家にいた3匹のダックスフンドとも親族になり、遊びに行く度に好きなように、無責任に可愛がった。インターホンが鳴ると3匹が揃って吠えながら玄関に向かう。義母が出かけると帰りを玄関先で待ち続ける後ろ姿は可愛かった。
甥っ子が産まれて、その子を抱き上げると、彼女は自分の子を取られたかのように歯茎をむき出しにして私に吠えた。あれは怖かった。母性本能という物を感じた。そして順番に3匹とも天国へ。ペットの火葬場にもついて行った。遺体は無感情に運ばれて、人間の葬式とは違いあっさりとした別れも経験した。付き合いは短かったので、永く付き合った義母の前で泣くのは違うな、と思って涙は我慢した。
今でも義実家のチャイムが鳴ると、フローリングの上を滑るように走る3匹の足音が耳に残る。悲しくはない。覚えている事は、生きている事に等しい。食事を摂る机の下にされたおしっこを踏んでよく靴下を濡らしたが、その心配はもうない。可愛がり終えてこちらは満足したのに、まだ撫でろと鼻で手をいじられる事もない。
そんなこんなで、2022年の10月に彼女は家に来た。お世話をするから、散歩も行くから、と妻を説得して千葉まで迎えに行った。散歩は行って2週間に一度。お世話は殆どしてない。子供はいわずもがな。オッドアイのミックス犬。名前は体毛の色からクロと名付けた。彼女は7月7日で4歳になる。
私が「抱っこ」というと妻の膝に乗る。顔を近づけると、フイっと避ける。食事をしていると、おやつを寄こせと前足で左腕をひっかく。2階に行くと吠える。体毛はクロからグレーになってきた。チャイムが鳴る前に気配を感じて吠える。待てもお座りもちゃんとできる偉い子(全部妻が教えた)。そんな彼女は本日4歳。誕生日おめでとう。これからも仲良くしようね。私は何をしてあげられるだろうか。御託はいいから散歩に行けやという声が聞こえる。
ってのが先日の飼い主の独り言。ワン。

